駿台模試ー第4回ー第1問
第1問
1. 正解 ②
②は誤り。自由権とは、国家権力による国民政治への干渉を排除することによって獲得された権利である。よって、自由権の本質は、国家権力からの自由(国家からの自由)を本質とする消極的権利である。国家による自由を本質とする積極的権利は社会権である。
①は正しい。幸福を追求する際に重要なことは精神的自由の保障であると主張したのは、J.S.ミルの考え方である。
③は正しい。自由とは社会的責任を果たす自由であると主張したのは、サルトルの考え方である。
④は正しい。理性の命令、すなわち善なる意志の命令である道徳に従う意志の自律(自己決定)が自由の本質であると捉えたのは、カントの考え方である。
2. 正解 ②
公共の福祉とは、人権相互の衝突を調整する原理であり、自由権を各人に公平に保障するための原理である。
②は誤り。表現の自由は、憲法第21条に規定される精神的自由である。政治的意見の表明や公開の場での討論が保障されることは、民主主義に必要不可欠である権利である。したがって、「公共の福祉」の名の下に安易に規制することは許されない。
①は正しい。「公共の福祉」による人権規制は、必要最小限度にとどめておかなければならない。
③は正しい。貧困や失業などの問題解決や社会的公平の実現のために、経済的自由には、比較的広い規制が認められている。日本国憲法第29条にも「公共の福祉」が規定され、正当な補償を前提に私権の制限できる法的根拠となっている。
④は正しい。国家が国民の権利に制限をかける場合、その運用は慎重でなければならない。
3. 正解 ⑦
新しい人権とは、時代変化のなかで、明文規定はないが、権利として認めるべきだとされる権利。
- プライバシーの権利 根拠規定:憲法第13条「幸福追求権」
・・・「私生活をみだりに公開されない権利」に加え、「自己に関する情報をコントロールする権利」をも含む
・・・国や地方に対して、情報公開を求める権利
・・・良好な環境を享受する権利
- 肖像権 根拠規定:憲法第13条「幸福追求権」
・・・みだりに容貌を写されたり、公表されたりしない権利
アは正しい。知る権利を実質的に保障するために国や地方自治体に対して情報公開を請求する権利に進化している。
イは正しい。新しい人権に共通する根拠条文として憲法第13条「幸福追求権」が挙げられている。
ウは正しい。情報公開法や個人情報保護法があるので、わざわざ憲法改正をして新しい人権を明記する必要がないという意見がある。一方で、社会状況の変化や国際的水準を考慮し、裁判の際にも判決の根拠として使いやすいので、新しい人権を積極的に明記すべきだとする意見もある。
4. 正解 ①
公的扶助
―目的:救貧
―制度:エリザベス救貧法(1601, 英)。恤救規則(1874, 日)。生活保護法(1946, 日)。
―目的:防貧
―制度:ビスマルクの社会保険制度(「アメとムチ」政策)。健康保険法(1922, 日)。
―目的:公的扶助と社会保険の総合的制度
―制度:社会保障法(1935, 米):「社会保障」という名称を持った世界初の法律。
ベバリッジ報告(1942, 英):ナショナル・ミニマム(全国民の最低限度の生活)の保障。「ゆりかごから墓場まで」がスローガン。
①は正しい。イギリスでは、第二次世界大戦中の1942年にベバリッジ報告が発表され、「ゆりかごから墓場まで」の包括的社会保障が実現した。国民の最低限度の生活のことをナショナル・ミニマムという。
5. 正解 ③
所得分布の均等度を示す指標に、ジニ係数がある。ジニ係数とは、ローレンツ曲線と均等分布線から下の三角形部分の面積に対する比率を指す。0から1までの値で示され、0に近いほど所得格差が小さく、1に近いほど所得格差が大きい。均等分布線は全世帯の所得が同一であることを示している。
X, Y 2017年時のジニ係数は当初所得で0.5594であったが、所得再配分で0.371に改善した。均等分布線に近づけば近づくほど、格差が解消されたことを意味するのだから、Xが当初所得、Yが再配分所得を指す。
医療保険の窓口負担
・基本(小学生~70歳未満):3割負担
・6歳未満, 70~74歳:2割負担
・75歳以上:1割負担 ←後期高齢者医療制度
(70歳以上であるが現役世代並みの所得がある場合は3割負担)
Z 医療保険の場合、窓口負担は原則として3割負担。
6. 正解 ②
介護保険によって、介護の社会化が進んでいる状況を示すデータを2つ選択する。
資料ア:要介護者等のいる世帯構造の構成割合の推移。単独世帯, 核家族世帯の増加と三世代世帯の減少を示し、家族だけで介護するのが困難な家族構成であることがわかる。→〇
資料イ:高齢者の推移。要介護者, 要支援者の増加を直接読み取ることはできない。→×
資料ウ:要介護, 要支援認定者数の推移。財源と人手の不足が推察できる。→〇
資料エ:社会保障制度に関する考え方で、どの世代でも所得や資産、支払っている保険料の額によらず、誰もが必要に応じて利用できるべきだと考えている。この考えが支持されて、介護の社会化が進んでいるが、本人負担引き上げと国民が納得したことを基礎づける直接の根拠にはならない。→×
7. 正解 ④
X イが当てはまる。人口減少で労働力人口が減少する中で、労働者不足を補填するためにはAIやロボットを導入することが考えられている。その結果、労働者1人当たりの生産性は上昇することが期待できる。
Y キが当てはまる。非正規雇用労働者の増加や働く側のニーズの多様化があり、従来は低賃金に追いやられていた非正規雇用労働者の処遇改善が必要であると考えられている。2020年にまずは大企業から、同一労働同一賃金が導入されることになっている。
8. 正解 ①
①は正しい。男性の育児休業取得率は2017年にようやく5%を超えたところであり、女性の80%超と比較し、著しく低い現状にある。
②は誤り。事業主の努力義務ではなく、禁止規定である。
③は誤り。終身雇用制は定年まで同じ会社で働き続ける制度のことであり、本人が希望した場合に限られるわけではない。
④は誤り。外国人労働者に対しても日本人労働者と同じく、労働基準法が適用される。
9. 正解 ④
イが正しい。リモートワークが進めば、地理的制約がなくなる。
ウが正しい。リモートワークの拡大で、ある程度の地方移住が見込めるだろうが、さらに移住を増やすためには、何らかの仕事がなければ地方への移住増加は望めない。
カが正しい。このまま東京への一極集中が続くと消滅してしまう地方自治体が出てくる。定住へのハードルが高いのであれば、様々なタイプの関係人口を増やすことで地域社会の活力を維持し、将来の移住のきっかけを作ることが大切である。観光客が増えても、直接的に移住には結びつきにくい。